Tales,小説リファラ

テイルズオブエターニアのラスダン突入前付近のリッドとファラのお話です。

※個人の解釈をもとにした妄想をもとにしています
※リファラ恋愛要素はほんのりのつもりですがあります

お好きな方はどうぞ!


 

 海の水は涙の味。
 ひとが泣くから海の水は塩辛いのだと、夢の合間に囁いてくれた人はもう居ない。

 ひとが泣くから、海の水は涙の味がするのだ。

 

 黒い絵の具を溶かしたような色の波間に、きらきらと星がまたたく。
 本物の星のかけらが、波間に浮かんでいるように見えて、ひとつ溜め息をついた。
 今は夜中で、キールもメルディもテントの中でぐっすりお休み中で、当然わたしだって夢の中でもおかしくないはずなのに、どうしてこんなことを考えながらぼんやりと夜の海を眺めているのかというと。
「ねえリッドー」
 砂浜に座り込んだ膝の間にあごを埋めたまま、返事がこないのを承知で五回目の呼びかけを試してみる。
 案の定、返事はない。
「リッドってばー」
 もう一回繰り返す。ようやく水の中から頭を出してこちらへ顔を向けたリッドが、ざぶざぶと水をかきわけるようにして浜に上がってきた。
「なんだよ」
「なんだって……もう上がった方がよくない? 夜の海なんて、危ないよ」
 いくらインフェリアでも暑いシャンバールの近くだからって、今日は満月で、泳いでいるリッドが見分けられるほど視界がいいからって、夜には変わらないのに。
 リッドときたら、「暑いな。泳ぐか」のたった二言でさっさと上着を脱ぎ捨てて、夜の海に飛び込んでしまったのだ。
「大丈夫だって。ファラも泳げば?」
「……どうやって?」
 そりゃ子どもの頃は、リッドやキールと一緒に肌着一枚で湖にもぐって遊んだりもしたけれど、さすがにこの年でそんなことは出来ない。それくらいの分別は、わたしにもある。
「どうって――着替えくらいあるだろ? 今のままでも入れるって」
 リッドが指さしたわたしの服は、いつもの格好から上着とエプロンを取った、ワンピース一枚だけ。暑いから泳ぐ、と言ったリッドの気持ちもわからなくもないくらいに、この辺りは本当に暑い。この薄いワンピース一枚でも、汗ばむほどに、暑い。
 それでも、リッドの提案は無茶だ。
「スカートじゃ無理だよ。泳げないもん」
 唇を尖らせて答える。出来ることならわたしだって、目の前に広がる海に飛び込んで遊びたい。きっと冷たくて気持ちいいに違いないのだから。
 でもでも、と、頭の中で必死にその欲求を打ち消すわたしの頭のてっぺんから爪先までをじーっと眺めたリッドがしかめつらしくうなり声を上げた。
「短いズボンでもあれば話は別だけ……っ!?」
 わたしが言い終わらないうちに、まるで藁束でも抱え上げるように軽々と、リッドは座り込んでいたわたしを肩の上に抱え上げた。
 そのまま、驚きのあまり抗議の叫び声も出ない私を肩に担いだまま、リッドはさっき戻ってきた時とは逆に、波をかきわけて深い方に進んでいく。
「え、ちょっ、何……! リッド、やだどこ行くの!?」
 自由になる膝から下の部分をばたつかせ、腕の当たる範囲をぽかぽか殴って抵抗するけれども、リッドは全然気にした様子もなく無言で歩き続け、そして。
「離してよー!」
「ほい」
 リッドのやけに素直な返答を頭が理解した瞬間、しまった、と思ったけれども、時既に遅し。
 わたしの要求通り、リッドはわたしをやっぱりひょいっとばかりに肩からおろして、そのまま支えていた腕を離してしまった。
 叫ぶ間もなく、素潜りを強制させられたわたしの耳元を、ごぼ、と空気の泡音が通り過ぎる。体に重たくまとわりついてくる水を腕でかき、足を思いっきり伸ばしてみて、ざらりとした砂の感触を見つけた。
 そこを頼りに思いっきり蹴り上げ、水面に顔を出す。
「ぷはっ」
 海水まじりの呼気を吐き出して、新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込む。二、三度むせた後、にやにや笑いながら正面に立っている、今さっき起きかけた悲劇の元凶を睨みつけた。
「何するのよ!?」
「涼しくなったろーが」
「びしょびしょになったって言うんだよ、こういうのは! あーあ……」
 けろりと答えるリッドとは正反対の情けない表情で、わたしは水の中で頼りなく揺れるスカートの裾を指で撫でる。腰までの高さもない浅瀬で危うく溺れかけたなんて、溜め息のひとつやふたつやみっつ、つきたくもなる。
「やだポケットに水溜まっちゃってる! また洗濯かあ……」
「そう言うなって」
 笑ったリッドが、片手ですくい上げた海の水を、投げるようにしてかけてきた。避けようとしてよろめいたわたしの腕を、リッドがとっさに掴んで支えてくれる。
「たまにはこういう息抜きも必要だって、どっかの偉いさんも言ってるぜ」
 掴んだままのわたしの腕を動かして水に指先をひたさせると、それを跳ねさせる。ぱしゃん、と、リッドに掴まれたわたしの手が涼しげな音をたてた。
「ホントかなあ」
 心底疑わしげに呟いて、短く溜め息をつく。
 ホントホント、と安請け合いしたリッドが、わたしからそっと手を離した。
 リッドのやり方は本当に不本意な不意打ちだけど、もう濡れてしまったものは仕方ないし、ただ洗濯するだけなのもなんだかしゃくだし。
 いくつか理由を無理矢理あげてわたし自身を納得させると、うつむくようにして両腕を体の両脇にぶらんと下げた。
「……そりゃ、無理矢理落としたのは悪かったけどよ。ほら、もう入っちまったもんは」
 わたしの沈黙を不機嫌ととったのか、フォローしようと頭をかくリッドの顔面に向かって、さっき下げた手の先に触れていた水を思いきりぶちまけた。
 ばっしゃん、と、派手な音が夜の海に響く。
 リッドの長めの前髪から、ぽかんとしている顔の線から、ぽたぽたと雫が落ちていく。
「へっへーん、だ。落とされたお返しだよっ」
「――の、ヤロー!」
 我に返ったリッドが、思いきり水をぶっかけてくるのに、わたしは悲鳴を上げて両腕で顔をかばい、波を蹴立てて逃げた。
「きゃあ! ちょっとリッド、目に入っちゃう!」
「ってお前どさくさにまぎれて足で蹴り上げたろ水!」
「知らないも……わっぷ! ずるいよリッドわたしスカートだから動きにくいよ!」
「ぐっ!? こらなんか今気弾がまじってたぞ水ん中!」
「ハンデハンデ! 水とばすのに使っただけだもん、リッド狙ってないもん!」
「技はよせ技はこのやろ!」

 そして、静寂は息切れと一緒にやってきた。
 わたしもリッドも、お互い肩で息をして、じっと睨み合いを続けてる。
「……うっわー。リッド、水も滴るいい男になってるよ」
「お前こそ鏡見てみろよ、すっげぇぞ」
 波が二度、寄せて返す間、沈黙が続いて、そしてわたしたちはどちらからともなく笑い転げ始めた。お腹を押さえて、体を二つに折って、ただひたすら大声で笑い続ける。
「もう、リッドがのせるからつられちゃったじゃない」
「誰だよ、めちゃくちゃイキイキしてたの」
「ふふっ。水のかけあいっこなんて、何年ぶりだろうね」
 水を吸って重くなったスカートの裾をさばきながら、ぐっしょり濡れている髪を一束手のひらに収めてぎゅっと絞った。
「リッドも、あとで川で水浴びするにしても、髪ぐらい絞っといた方がいいんじゃない?」
「そうかぁ? めんどうだからいいや」
 言うなり、リッドが勢いよく頭を振って水滴をとばす。それが目にかかって、わたしが抗議の悲鳴を上げると、リッドが悪ぃ悪ぃと笑いながら声をかけてくる。でも、塩水が目に入って答えるどころじゃないわたしは、ぎゅっと目をつぶっていた。
 波をかきわけて歩いてくる音が近づいてくる。たぷん、と、波が大きくわたしの足を撫でて止まった。
 大きな手のひらが、そっとわたしの額と頬に添えられて、顔を上げさせられる。
「入ったか?」
「ちょっと……」
「じっとしてろよ」
 目を閉じていても痛いけれど、開けても痛そうなのでぎゅっと閉じている私の目元に、何か温かくて湿っぽい、柔らかなものが這う感触がした。
 同時に、濡れたせいでいつもよりずっと敏感な頬で、すぐ間近で空気が揺れ動いていることを感じる。
 それらを総合した結果、今何が起こっているのかを理解して、わたしは頬に血を昇らせた。
 つまり、海水まみれのリッドは、わたしの顔を拭くことが出来ないから、唯一海水にあんまり浸かっていないところでなんとかしようとしたのだ。
 ――これがラシュアンで誰か見てたら絶対大騒ぎだけどそもそもラシュアンに海はないし湖はあったけどていうか何も舐めなくてもそのうちきっと涙で流れるのにああでも。
 暴走する思考が、ふと止まった。
 小さな傷は、リッドは小さい頃から「舐めときゃ治る」で済ましていたんだっけ。
 それは、リッドのお父さんの口癖で。だから、リッドも真似していつもそう言って、わたしやキールが怪我してもいつもそう言って。
 いくつくらいの時だったっか、ころんで顔をすりむいたわたしに、リッドはいつもの台詞を得意げに告げて。わたしが「舐められないもん」とふくれると、リッドが舐めてくれたりしたこともあった。
 でもあの頃は全然子どもで、触れることも触れられることにも、特別な場所も意味もなくて。
 リッドにとっては、今もそうなのかも知れない。
 だとしたら、わたしがうろたえるのもなんだか変で、かえって意識しているみたいで、ひたすら暴れる心臓を宥めながらそれが終わるのをじっと待った。
 ふと、繰り返されていた仕草が止まる。
「どうだ?」
 相変わらず、顔はリッドに固定されたままだけど、わたしはそっと目を開けた。何度かぱちぱちとまばたいて、頷く。
「うん、大丈夫。ありがとう、もういいから」
 そう言って笑いながら、さりげなくその腕から逃れようとあとずさりかけた時、唐突にリッドがばっとわたしから手を離した。
「……悪ぃ! いや別に変な意味はねえからな!? ほらオレが水かけたんだからその!」
 ――どうやら、今頃気付いたらしい。
 そのタイミングの外し方も、とにかくわたしの目を治すことしか考えてなかったんだろうことも、そこで必死に謝っちゃうあたりも、言い訳がなんだか言い訳になってないあたりも、どうにもこうにもわたしの知ってるリッドで。
 わたしは吹き出した。笑いの発作はおさまらなくて、そのままお腹を抱えて笑い転げる。
「……笑うか、そこで? つか笑いすぎじゃねえのお前」
 憮然と呟くリッドが、笑いすぎて涙目になった視界に映る。
「だ、だって……怒った方がいい?」
「いやそれもちょっと」
「でしょ?」
 まだ尾を引く笑い声を必死に収めながら、ぱしゃん、とわたしは片手で水を跳ね上げた。ゆらゆらと水の中で揺れるスカートをもう片方の手でおさえながら、そろそろと歩く。
「しょっぱかったでしょ?」
「何が?」
 とりあえずわたしが笑い転げたことで、混乱からは脱したのか、リッドがやっぱり水を手の中でもてあそびながら聞き返してくる。
「海の水」
「……いや、だから悪かったって」
 さっきの話の続きかと思ったのか、リッドが謝ってくるのに、あわてて両手を振る。
「あ、違う違う、舐めたことを怒ってるんじゃないよ? むかーし、お母さんが読んでくれた物語に、海が出てきたことがあってね」
 まだ、海を見たことがなかったわたしは、湖より大きなひたすら水ばかりの挿絵と、読み上げられる物語を頭の中で結びつけようとして挫折した。そんなわたしに、お母さんはいつか本物を見せてあげるね、と笑いながらその話の続きを読み上げてくれた。
「今でも覚えてるよ。えっとね、『そして、たくさんのひとがおいおいなきました。あんまりにもたくさんないたので、うみはしょっぱくなってしまったのです』って」
「そうなのか?」
 真顔で尋ねるリッドに、わたしは肩をすくめた。
「おはなしだよ。昔話。海の水は涙の味。ひとがたくさん泣くから、って」
 夜の海はどこまでも黒々と広がっている。水平線の方を眺めながら、わたしはその広さに飲み込まれそうな気分で目を閉じた。
「……世界中の人の涙を集めたら、ホントに海になるのかもしれないね」
 十年前、たくさんの涙を見た。
 リッドも、キールも、叔母さんも、村長も、隣のおばさんもおじさんも、近所のお姉さんも、誰も彼も。
 その時まで、泣いたりしないんじゃないかと思っていた大人が、たくさん泣いていた。
 わたしも泣きながら、それを見ていた。
 そして、思った。きっと、この涙も海に行くんだって。
 そしたら、きっとお母さんやお父さんの涙とも一緒になるんじゃないかって。
「オレはゴメンだね」
 怒ったような調子の、やけに力のこもった声に、わたしは目を開けて声のした方を探した。
 見つけたリッドは、さっきと変わらない場所に立っていた。まっすぐわたしの方を見て、ほとんど仁王立ちのように立っていた。
「お前の涙が混じってる海なんてまっぴらだ」
 吐き捨てるような台詞が、真っ直ぐわたしに向かってきて、わたしは躊躇いながら笑顔を浮かべた。
「な……何も、そんなこと言ってないよ? わたし」
「思ってただろうが、似たようなこと」
 ざぶざぶと、乱暴に波をかきわけながら、リッドがわたしの方に歩いてくる。
 逃げるのも、視線を逸らせるのも、リッドの言葉を肯定することになるから出来なかった。
 そんなことないと言っても、きっとリッドには通じない。
 揺り返す波のようにやってくる後悔から、もう逃げないと決めたけれど、それでも時々それに飲み込まれそうになる。
 わたしは笑っていていいの?
 幸せになってもいいの?
 頭のどこかに、いつもそうやって、わたしを見張ってるわたしがいる。
 現実に、わたしは今生きていて、優しい仲間達と笑ったり怒ったり苦労したり助けられたりしながら毎日を過ごしていて。
 それは、楽しくて、幸せで、大切で。
 それでいいのか、と、わたしの中の『わたし』が時々囁く。
 わたしの身勝手なワガママが、たくさんの人の命を奪ったのに。たくさんの人から笑顔を奪ったのに。のうのうと笑っている資格があるのか。泣く権利なんてあるのか。
 ぴしゃん、と、両方のほっぺたが、両手で挟み込まれるようにして鳴った。大きくまばたきをした私の正面で、リッドがこわいくらいに真剣な顔で、ひとつ息を吸った。
「お前が笑ったら、誰か不幸になるのか?」
 覗き込んでくる、青い瞳。月明かりしかないここでは、本当にそれは夜空の色で。
 その瞳がまっすぐに覗き込んでくる。
「お前が泣いてたら、誰か幸せになるのかよ?」
 その声が、まっすぐわたしに飛び込んでくる。
 唇が、小さく震えた。咽がくっと鳴る。泣きそうになるのを堪えて、わたしはどう答えて良いのかわからないまま、ただリッドの瞳を見つめ返していた。
「考えるなとはいわねえよ。オレだって、しょっちゅう思い出す。その度に、なんで止めなかったんだって思う。これからも、きっと何度でも繰り返す」
「違うよ! リッドのせいなんかじゃない! あれは」
「お前だけのせいじゃない。何度言わせりゃ納得するんだよ?」
 思わず声をあげたわたしを遮る、苦い、リッドの声。何も言えなくてうつむきかけた途端、リッドがわたしの頬を挟んでいた手に力をこめて、結局顔を上げさせられた。
「……お前が、簡単に割り切れないのもわかるから、気にするなとは言わねえよ。けどな」
 わたしがそれ以上うつむこうとしないのを感じてか、そっと、リッドの手が離れていく。
「お前が泣いてたら、笑えねえヤツが居るんだよ」
 まばたきをした。二度、三度。
 首をかしげる。
「……どこに?」
「このへんに」
 乱暴に言い切って、リッドがくるりと背を向ける。
 そのまま、岸辺に向かって歩きはじめるリッドの背中を、わたしはただ見つめていた。
 大きくなった背中。
 でもその背中は、小さい頃、森で獣を襲われたときに腕と足を精一杯広げて、わたしとキールをかばったものと全然変わらなくて。
 その時、わたしはすとんと何かが胸の中でおさまるのを感じた。
 まるで、なぞなぞの答えが解けたときのように。
 ああそっか。
 わたしが笑っていられたのは、リッドが変わらなかったからだ。
 いろんなものが変わってしまって、リッドがひどく遠くなったように思えたこともあったけれど。それでも向けられる笑顔も、伸べられる手の温かさも、変わらなかったから、わたしはわたしだったんだ。
 みんなが思ってる、元気で明るくてお節介焼きのファラだったんだ。
 なんて簡単な答えなんだろう。
 ずっとずっと長い間、それは難問だったのに。
 唇をきゅっと引き締めて、水を跳ね上げてわたしは水の中を走った。派手な水音にリッドが振り返って、ぎょっとしたようにわたしの名前を呼ぶ。
「おい、水の中で走ったりしたらこけ」
 るぞ、は聞こえなかった。その通りにわたしは転んでいて、水の中に潜ってしまっていたから。
 水の中でもがいて、なんとか顔を上げると、慌てて戻ってきたリッドが心配そうに手を伸べてきた。
「大丈夫か?」
 少し水をのんでしまったせいで何回かむせたあと、わたしはその手を取って立ち上がった。
 唇の両端を上げる。ほっぺたに力を入れる。目尻が下がる。
 笑うための準備なのに、どうしてか涙がこぼれた。
「ファラ?」
 不思議そうにリッドが覗き込んでくる。
「わたし、笑ってるよ」
「……あんまそうは見えねえけど」
「笑ってるの」
「へいへい」
 リッドの手のひらが、ずぶ濡れのわたしの頭にそっとのっかった。
 そのまま、ぐいとリッドの胸に引き寄せられる。
「もし泣くんなら、オレの見えるとこで泣け」
 もう声にならなくて、わたしは小さく頷いた。
 リッドだって、きっと泣きたいことも辛いことも、たくさん抱えてるのに。
 一人で試練を受けて、何があったのか話してくれないまま、一人で何かを考え込んだりしてるのに。
 だけど、もうちょっと待ってて。
 明日からは、ちゃんと、いつものファラに戻るから。
 お節介で、猪突猛進で、ドジったらリッドに迷惑かけながらなんとかする、いつものファラに戻るから。
 今日だけは、ほんの少し、この腕に甘えさせてね?

 海の水は涙の味。
 ちょっとだけ、今日の海は、わたしの涙の味。

 

―了―