ことのはをきみへ
■ニンジン先輩へ
手紙は久しぶりだ。こないだの休養日はスパーリングに付き合ってもらって助かったよ。サイをも倒す死角からの一撃がいかにまずいのかは身をもって覚えたから、こっちが仕掛けるときの参考にするさ。君にとっての手加減無用は全力全開こてんぱんだってことも、合わせて覚えておくことにする。
さて、君はこの手紙と同封した紙切れと、どちらから先に見ただろうね?
オーケーオーケー、こないだ頂戴した君のありがたいアドバイスは覚えているとも。中間試験の返却答案は全部とっておけ、全問正解にして何度も見直せってね。ちゃんとコピーは手元にとってある。全問正解に訂正する必要はなかったのさ、ってことを君に示すには、本物を送るのが一番かと思ってね。
まあ俺が本気を出せばざっとこんなもんさ――と言いたいところだけど、自分でも少々驚いてるよ。一問や二問くらいは落としたかと思っていたからな。おかげさまで、実技で届かない分の底上げには成功した模様だ、ニンジン先輩。
おっと、きっと君が心配してしまったけど俺には尋ねにくいだろうことを、ばっちり言い当ててみせようか。
カンニングなら、教官がたからは疑われなかったよ。君は知ってるだろう、どれだけ試験の時のカンニング対策が厳しいかって。机と椅子と黒板しかない殺風景な部屋の四方に、キリンとウサギのトーテムポールが居座っているのはなかなかの圧迫感だったよ。あれこそ全方位死角なしってやつだな。
口さがない事を言う連中は警察学校の中にだっているもんだ。聞こえよがしに言ってよこしたのはごく少数だけだったけどね。こいつはやってないって言い切ってくれる奴がいて、俺が自分に胸を張れるなら、全く気にならないってことに初めて気がついたよ。むしろ、俺とつるんでくれてる奴らの方がいきりたってくれた。前に話しただろう、ノウサギのダズなんかは君に憧れてるのもあってか、凄い剣幕だったよ。『それでもお前らは金のバッジを目指す場に居る資格があるつもりか!』ってね。君みたいな奴は意外にけっこう居るもんだな。
なに、俺にとっては卒業試験の筆記でも満点をとってみたくなったくらいのものさ。バニーバロウからやってきた負けん気ウィルスは伝染性だったらしいぞ、ニンジン。
というわけで、明後日から三日間の休暇だ。補習がないって素敵だが、実技の強化合宿なるものを敬愛するシロクマ教官があくまで自主的に開いてくれるそうなので、あくまで自主的に参加してくるよ。
そうだ、先日ついに自分でも驚くほど立派な力こぶを三十秒キープすることに成功したぜ。目に見える成果をせいぜい励みにして、ぼこぼこにされてくるとするよ。
君の弟子より